ANA国内線【PR】

アート旅/旅アート
by kinoppi-cxb
XML | ATOM

skin by excite
進みゆく時を目に、切なく、そして温かく
初めて彼女を取材させてもらったのは、確か1997年の夏だったと思う。写真家・野村佐紀子。毎年夏にアートスペース貘で展覧会をおこない、新作を発表している。新作を発表するというのはアーティストにとって非常に肉体的にも精神的にも労力を使う、大変なことだと知っている。しかし、彼女はそれを毎年続けるうえに、毎回違う印象を与えてくれる。彼女の作品はもちろんだが、彼女の持つ無限の表現力に魅了され続けている。

3月3日に始まった今回の展覧会の会場は、アートスペース貘ではない。BAR & WHITE SPACE ONEという、初めて訪れる場所だ。バーと聞いていたので、てっきり店内の壁の空いたスペースに作品を飾っているのかと思いきや、入口側すぐの手前のスペースがギャラリーのような立派なホワイトスペースで作品はそこに展示されていた。


事前に作品は24×20インチの巨大アナログインスタント写真(いわゆる「ポラロイド写真」)と知っていたが、インチの単位がいまいちピンとこなかった。会場に着き、展示された写真に「で、でかっ!」と驚いた。なんでも撮影したカメラは世界に3台しかないもので、約200kgの重さというオバケのようなカメラだとか。撮影するのも、現像するのも非常に時間と手間がかかるという。当たり前だ。会場には、このカメラで撮った写真作品6枚が展示されているが、撮影は半日がかりでおこなわれ、撮った写真はきっかりこの6枚だけだったという。

貴重なカメラを使っての撮影。しかも撮影は大仕事であり、さらにインスタントフィルムゆえ焼き増しできずオリジナル写真はたった1枚しか存在しないことになる。「カメラの存在は重要です。もちろん撮る時の気分は、いつもとは異なりました」と野村佐紀子。「でも何より被写体との関係性が大きく違いましたね」。被写体は、子ども。子どもは集中力がすぐに途切れてしまう生き物だが、半日続いた撮影にも関わらず、「彼も私も互いに、ずっと真剣に向き合った」と言う。

ポラロイド写真は、時が経つにつれ色が褪せていく。このオリジナル1枚のみの巨大インスタント写真もいずれ、消えゆく運命にある。訪問時、まだ現像液は乾ききってなくて、じわじわと被写体が浮かび上がっているのか、それとも逆に消えていっているのか、なんとも言い難い感じだった。写真は記録性が強く時を止めるものでもあるが、この作品に至っては進みゆく時を目にするような感じを覚えた。見えない時間の流れを見るようで、なんとも切なく、そして少し怖くもあり……心が揺さぶられ、目がしらが熱くなる。
一方で、被写体の子どもの強く真剣な眼差しに“未来”を感じ、切なくキュンとなった胸に、次に温かいものが流れてくる。
胸がキュンとなったり温かくなったり、泣きそうになったり微笑みそうになったり。感情のカオス。しかし、複雑でぐちゃぐちゃしたものでなく、心地よい混沌さ。

野村佐紀子に驚かされ、胸を動かされるのはもうこれで何度目だろう。しかも、今回の驚きと感動はかなりのビッグウェーブだ。そしてまた、私はますます彼女に魅了される。

小さい、というか普通サイズのポラロイド写真作品もあわせて展示されている。奥のバーもとてもいい空間。ここでシャンパン飲みながら、作品をゆっくり鑑賞したい……。

※同時開催でほか市内4カ所にて野村佐紀子の写真集をテーマにした写真展も開催されている。各会場、それぞれのオーナーが気に入った写真集を選び、そのオリジナル写真を展示。野村佐紀子の写真集を巡る展覧会というわけだ。


「instant film」野村佐紀子写真展
2012/3/3~4/7
会場:BAR & WHITE SPACE ONE
詳細はコチラ
# by kinoppi-cxb | 2012-03-23 00:56 | 展覧会レビュー
いつのときも人を包みこむ。糸と布の“人間の生に寄り添う力”
展覧会準備が着々と進められていた昨年12月に、企画者の学芸員の竹口さんに取材をさせていただいた。伝統工芸に造詣の深い竹口さんが、「おっ」と思ったという10組の作家たちを紹介するという。「糸の仕事、布の仕事、作品がもつそもそもの魅力だけでなく、作品から滲み出るその人たちの生き方・“いのちの世界”を伝えたい」と、出品交渉はもちろん、彼らのロングインタビューも行なった竹口さんの言葉の一つひとつ、その奥底に熱いものを感じた。「(作家の一人)上原美智子さんの布はとってもとっても薄いんだけども、掌に乗った瞬間、ふわっと温かい。触れることによって関係が開かれる。糸と布って、人間の生に寄り添う力があると思う。その部分を伝えられたら」。こんな話を聞いたら、そりゃおのずと期待は高まるでしょ。

そして開幕後、知人や他メディアからよい評判が伝わってきた。あまり期待しすぎてもよくないな~なんて思いながら会場に向かったのだが、はいゴメンナサイ、その心配はまったくの杞憂でございました。

【以下ネタバレ】
最初に展示されていたのは、竹口さんが説明されていた上原美智子さんの布。「コレハホントニヌノナノカ?」。驚きのあまり、脳内の日本語変換が微妙になる。なんとも繊細な、薄い、薄い、薄い手織りの布。「あげずば織」。「あげずば」とは琉球の言葉で「蜻蛉」を意味するそうだ。その言葉どおり、まさに蜻蛉の羽のように、重量をまったく感じさせない。天井から吊り下げられた作品は、私が歩くだけで「ふぅわ」っと揺らぐ。歩いて生じる空気の振動で揺らぐ、それほどの軽やかさなのだ。俗っぽくて申し訳ないけど、「ハリーポッターの“透明マント”を凌ぐ軽やかさかも」、なんて思ってしまった。とにもかくにも、我々の周りにある「空気の存在」までも伝わってくる。

堀内紀子さんの「編による造形」も、同じように「空気の存在」を感じさせてくれる。こちらは視覚的に。宇宙的な深みをもつ福本潮子さんの藍染、何層にも絵具を塗り重ねた抽象絵画のような志村ふくみさんの重厚なる紬織、もはや手技の域を超えた鈴田滋人さんの木版摺更紗……一人ひとり(組)の作品の感想をあげればきりがない。

展示の仕方によってはその魅力が半減することもあり、逆に作品の真髄がさらに観客へと伝わることもある。今回、美術作家の坂崎隆一さんが会場構成を手掛けたことにより、まさに後者の効果を得ていた。それぞれの作品にすうっと向き合え、じっくりと彼らの手技が堪能でき、魅力が存分に伝わってくる。作品点数はさほど多くないものの、「もっと見てみたいなぁ」と、これから先も出品作家たちへと引き続き興味を持たせる腹八分目の点数は、私にとってはちょうどいい。

各作家たちの略歴と、解説の代わりとなる引用文もぜひじっくりと読んでほしい。簡潔な短い文章にもかかわらず、各々の作家たちがどう作品と向き合っているか(きたか)、また作家たちの人となりまでも感じることができるのだ。彼らのように作品を作ることはできないけれど、その生き様を知ることは、これからの人生の参考になる。そう思った。
展覧会図録には、竹口さんによる各作家のロングインタビューも掲載されている。テープ起しすると各作家およそ20000字あったものを、約5000字に編集しなおしたものだという。こちらを読むと、さらに作家たちの生き様が垣間見られるだろう。読むのが非常に楽しみだ。


「オギャ~」と産まれ、産着を身に着けてから、死ぬまでの長い間、我々人間は布を纏っていきていく。会場に飾られたもののように立派なものはもちろん手に入れることはできないが、折り返しを迎えた我が人生、時々は、気持ちよい・心地よいものを自分の身体に纏ってあげようと思った次第。展覧会「糸の先へ」。糸から、布から、その先へ広がるもの……私がその先にみたものは、広い意味での「人生」だった。ん……? 「糸と布って、人間の生に寄り添う力があると思う」と言っていた竹口さんの思惑に、まんまとはまってしまったわけだな。


展覧会図録とチラシ。チラシは広げると大判になる。表面の糸を表した線画は、デザイナーの手描きによる渾身の仕事! 裏面には竹口学芸員による1700文字ものテキストが。











糸の先へ
いのちを紡ぐ手、布に染まる世界
2012/2/4~3/11
会場:福岡県立美術館
詳細はコチラ
# by kinoppi-cxb | 2012-02-24 15:23 | 展覧会レビュー
冬の訪れ。エネルギーをたくわえ、そして再生する
今年は秋が長かった。時に小春日和な日もありなかなか冬の到来を感じられなかったが、ここ数日で急に冷え込んできた。寒いのはニガテだし、日が暮れるのも早くすぐに暗くなるのも好きではない。が、ピンと張りつめた空気感や、太陽が早く沈むゆえの早い時間からの静寂の始まりは、嫌いではない。暗くなるのが早いと、活動が鈍ったり停止したりする分、冬明けに備えて身体や脳ミソが準備するような感覚になるのが、生き物の本能的な感じがして心地よい。
……という気持ちを漠然と前々からもっていたのだが、今回、武内貴子さんの作品を見て、また話を聞いて合点がいった。

11月20日にアーティスト・トークが開催。武内さんは精力的に作品を制作・発表しているアーティスト。彼女の作品はこれまで何度も見てきたし、本人とも面識があるけれど、実はコンセプトなどきちんと話を聞くのは初めてだった。























天井から吊り下がる無数の赤い布の「結び目」のレイヤー(層)。少し横から眺めると、下部は半円の弧を描く。毎年12月にやってくる「冬至」と、キリストの誕生日である「12月25日」をテーマにしたという作品。半円の弧は、地平線から半分だけ顔をのぞかせる太陽の形と同じだ。朝日が希望を象徴するのは言わずもがな、武内は夕陽も「陽が沈んだら、明日がやってくる」と未来へ向かうイメージと話す。チラシに書かれている作品の説明によると、冬至は「冬が終わり、春が来ることを告げる日とされている」、そして12月25日は「“一度は闇に覆われかけた世界に再び光が生まれ変わること”を象徴する日」なのだとか。
私の解釈を一言で表すならば「再生」だ。「リセット」と言ってもいいかもしれない。例えば樹が、一年を通して芽を出し、花を咲かせ、実を実らせ、葉を茂らせ、葉を散らせ、そしてまた芽吹く……と毎年リセットしながらその生命のサイクル繰り返し、ある一定の時期まで、強く、たくましく育っていくように、人間も冬の時期にリセットしているのかもしれない。そう感じさせられた。


無数の布に紛れところどころに赤いリボンが結ばれている。ピシッとした「結び」のなかにある「ほっ」とする「間」。














トークでは、作品の素材とする布に蝋を染み込ませる工程、複数の意味をもつ「結ぶ」という言葉への想いと表現、「結」を基本に展示空間・場所・テーマによって変化を遂げる造形や色……などについて、過去作品とも照らし合わせながら話してくれた。
ちなみに今回の「赤」は、太陽やクリスマスをイメージさせる狙いはあるものの、そもそも彼女が原点から大切にしてきた色でもある。武内さんは、学生時代から着物の帯の「結び」に美を強く感じ、その着物姿の女性をさらに美しくするのが紅の「赤」であり、その色に強く惹かれているという。赤は時には強すぎてえぐくなることもあるが、一方で、冬の寒い今の時期には温かみと生命力を強く感じさせる。また、ファッションビルの中では、空間の演出・彩りにはとても効果的な色だ。

トークの中で、なるほどと思ったエピソード。白い結びの作品を青森で発表したときの話。地元の人は「ボタ雪のよう」と言う人が多かったのに対し、同じ作品を北九州の人が見たときに「素麺を干しているみたい」と言ったそうだ。この事に対し、「土地によって見る人の印象が異なっていた。作品を見るとき、人は自分の経験に重ねるんでしょう」と言った武内さんの解釈に共感した。ちなみに私は彼女の作品を見るたび、神社をイメージする。まぁ、単純におみくじのイメージと結びつけいるんだろうけど……つくづく、日本の国に生まれた人である。日本文化をまったく知らない人と武内さんの作品を一緒に見てみたくなった。


会場は3~5階の吹き抜け。4階、5階からも作品を眺めてみよう。違う表情を見せてくれる。















九州アートゲート 博多アートステージVol.3
武内貴子

2011/11/18~12/25
会場:アミュプラザ博多3階センターコート(吹き抜け)
詳細はコチラ
# by kinoppi-cxb | 2011-11-26 00:41 | 展覧会レビュー
【info】九州沖縄アジアアート観光ガイド
今年3月に発行した『九州沖縄アートたずねちゃいマップ』の興奮冷めやらぬまま、Fukuoka Art Tipsが新媒体を制作しました(発行は「九州アートゲート」)!



これまでの発行物は、折り込んだ1枚のペーパーでしたが、今回はなんと8ページの冊子にグレードアップ!?

9 月9 日(金)からJR 博多シティ(アミュプラザ博多)を会場に<アートきっかけで旅しよう>という趣旨のもと開催される「九州沖縄アジアアート観光ウィーク」に合わせて作成しました。
福岡県、福岡市、佐賀県、長崎県、大分県、熊本県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県、韓国釜山、台湾台北、シンガポールのアートスポット/プロジェクトを、各地の「アート通」のオススメ人さんがご案内! 加えて、各地の観光・グルメ情報などもちびっと紹介してくれてます。

その土地のことはその土地の人に尋ねるのが一番! はっきり言って、Fukuoka Art Tipsメンバーも知らなかった情報が、オススメ人さんたちからどんどこ出てきました。
九州全体のアートシーンを紹介する媒体はこれまでなかっただろうし、さらには沖縄から釜山、台湾、シンガポールまでも紹介エリアに入っているという、それも新鮮なネタ多し!のよくばりな冊子に仕上がりました。
ページ数および紙面スペースの都合上、掲載物件数は限られ、また各物件の紹介文も短いですが、アートの最新情報を知ることのできる、充実の内容になったのではないかと自負しています。

この情報を生き生きと読みやすく楽しく演出してくださったデザイナーOさん、イラストレーターSさんにも感謝です。
そして、今回もまた、鹿児島在住のアーティスト・浦田琴恵さんが制作に関わってくれました。今回は、表紙とオススメ人の似顔絵。制作サイドからは最低限の決まりごとだけをお願いし、あとは自由に描いていただいた表紙の絵は、まさに彼女の作品。楽しく強いインパクトを放ってくれ、すでにお届けした掲載先にも大好評です。

主な配布先は、JR博多シティをはじめ、九州沖縄の掲載スポットや主要美術館などなど。
ぜひ、お手にとってご覧くださいませ。

※弊マップを制作するにあたりご支援・ご協力いただいたみなさま、誠にありがとうございました。
# by kinoppi-cxb | 2011-09-10 00:13 | インフォメーション
【info】九州・福岡アートマップ!
2009年に発行し大好評(!?)いただいた『福岡コンテンポラリーアートマップ2009』から2年。満を持して、Fukuoka Art Tipsが再び、アートマップを作っちゃいました!



発行は今年の3月1日。
九州新幹線全線開通記念。JR博多シティオープン直前になんとか発行できました。

今回のメインマップは九州全域。
鹿児島在住のアーティスト・浦田琴恵さんが以前作成・発行した『九州・沖縄アートな人々たずねちゃいマップ』がベース。モノクロだったマップを、今回のためにカラーにしていただき、また、発行時期にあわせて情報もちらほら加筆修正していただきました。
手描きが柔らかく温かく、ほっこりした感じのマップ。九州の温度感が伝わってくるところがいいっ。

さらに、裏面に『福岡コンテンポラリーアートマップ2011』が合体。2年前のマップと比べると、ずいぶんアートスポット情報変わってますけん。福岡を訪れるアート好きな皆様、要チェックです。

主な配布先は、JR博多シティをはじめ、九州・福岡のマップ掲載スポット。
詳細はこちらで紹介されてます。
Art Mania Fukuoka

九州・福岡のアートをめぐる旅、このマップ重宝しますぞ。


※弊マップを制作するにあたりご支援・ご協力いただいたみなさま、誠にありがとうございました。
# by kinoppi-cxb | 2011-03-02 19:38 | インフォメーション
ただいま産休中
過去2回の投稿で、10月に起こった突然の出来事・・・
それは、予定よりも3カ月も早い、出産でした。

私の両手で包みこむことができるほどの、小さな小さな女の子が誕生しました。
小さいけども、大きな生命力。
700グラムにも満たなかったその身体は、4カ月経って、体重は5倍以上になりました!

本当に小さく産まれたんだっけ?
と思うほど、いまは、元気に泣きじゃくっては母を翻弄させている我が娘。
寝不足や、育児トラブルで身体はヘトヘトですが、
出産当時の精神的不安は、払拭しました。

精神的に元気になったし、本業の仕事もお休みしているし、
さぁ、書きたかったブログも更新しよう!
と思ってはいたけど、予想以上に育児は大変。

引き続き、こちらのブログは、牛歩並みのゆっくり更新とさせていただきます。

いつになったら本格的に始動するのか?
とにかくまずはこの育児戦争を乗り越えることが先だ。
ケセラセラ!
# by kinoppi-cxb | 2011-02-17 19:04 | インフォメーション
沈黙からの離脱、後押し
このブログの主テーマ、アートネタでも旅ネタでもないけども、いま、書いておきたい。

10月18日、昔いた会社P社時代の先輩が亡くなった。
溝口久美さん。

P社でアシスタントとして入社した私は、営業部へと配属された。
溝さんは、その営業部の制作チームとして、2週に1度発行していたタウン誌の台割を管理したり、広告の版下を制作したりしていた。
パソコンいじりやタウン誌の制作に興味をもっていた私に、溝さんは本来、アシスタントがする以上の仕事を私に教えてくれ、与えてくれた。自分が制作に携わったページが印刷物として出来上がったときは、それはもう感動したものだ。
アシスタントを半年経験した後、社員としてP社に採用された。わりと倍率は高かったように聞いた。そんななか私が入社できたのは、溝さんがくれた仕事を、役員が見ていてくれ評価してくれたのもあるだろう。
数年後に退社し、いま、私はフリーの編集者/ライターとして活動している。
溝さんは、いわば、いまの私の原点に大きく関わった人なのである。

溝さんのお通夜と葬儀は、大分の実家でおこなわれた。
元同僚何人かと一緒に、お通夜にうかがった。

前のブログ記事で書いたように、10月に突然起きた出来事になかなか気持ちが対応できず、私はここ1カ月ほど沈黙していた。人に会うのも、必要以外の外出も避けていた。

溝さんのお通夜に出席することで、親しかった人とも再会でき、また近況を自然に伝えることができた。ふっと、肩の力が抜けた。
頑なになっていた私の心が解きほぐれる、そんな機会を溝さんが与えてくれた。
心の弱くなっていた私の背中を押してくれたのだ。
最期の最期まで後輩の面倒見がいいったら、溝さん。


沈黙は、もう立ち去りました。
さて、これまでのように、前を向いて進むことにしよう。
# by kinoppi-cxb | 2010-11-23 23:51 | インフォメーション
沈黙からの離脱前
9月に北九州・門司を中心に開催された「街じゅうアート」のレビューを書いていた途中で、やんごとなき出来事が訪れ、執筆中断。いまに至る。もはや、そのレビューの続きを書くには、時間が経ちすぎ、そして気力もない。

今年の10月という1カ月は、長くもないが、決して短くもない私の人生において、一番ハードであり、また幸せも訪れたひと月だった。大げさではなく、人生観が変わったと言ってもよい、経験をした。

地元のタウン誌のアートページ制作をきっかけにかかわり始めた、アート。その頃からすでに10数年、1カ月以上もアート展やアート関係のイベントに行かなかったのは、初めてだ。実際、物理的に行けなかったのであるが……。

まだ状態や環境が万全でなく、どうしようか迷った。でも、どうしても見たかったのだ。アートスペース貘で11月6日まで開催されていた「非知なるものの日々 冨永剛×元村正信」展の最終日に駆け込んだ。
冨永の落ち着いた空間の中で、眺める、静謐さと躍動さを兼ね備えた元村の絵画。深く、深く私の胸に染みこんだ。10月のとある経験で、「命」というものに直面した私にとっては、特に元村の絵画から、「生命の誕生」、「生きる」ということ、さらには「死」とうものまで感じ取れ、非常に胸がうたれた。

純粋に彼らの作品、いわゆる「アート」に心が癒された。
仕事を兼ねて作品を見続けると、そういったアートの持つ力を時に忘れてしまう。それを、彼らの作品を見て、改めて思いだすことができたのだ。
そう、アートは、力を持っている。


私自身が沈黙から脱出するには、まだ少し時間がかかりそうだが、いまこそアートに触れたいなぁと心から思う。少しずつ、出かけて行こうかなと、やんわりと思い始めた。
# by kinoppi-cxb | 2010-11-08 11:55 | インフォメーション
木下晋に、静かに心、奮い立つ
乾燥な気候が続くためか、黄砂の影響か、口の周り、目の周りの肌がガサガサだ。
こんな日は、ブルー。
できる限り、知り合いと会いたくない。

5月20日に新創刊する雑誌<ソワニエ>のカラーコンセをチェックした後、本当は、「ギャラリーおいし」で開催中の「大庭実華 展」と「アートスペース貘」で開催中の「南たえこ展」に行こうと思っていた。今週末までだから。
でも、この顔。
恥ずかしさと萎えた気分がまじりあい、さらにそこにちょっとした私的な悩みが加わり、ブルーの色は青から深淵へ。。。
そのまま家へ帰ろうと城南線を自転車で走っていたが、なんだか急に気が変わり、ハンドルを右へ、旋回。
「そういえば福岡市美術館で、木下晋展をやっとったなぁ」。
「福岡市美なら、そうそう知り合いにあうこともないやろ」
心でつぶやきながら、ペダルをこぎこぎ。


濃度の異なる20種類もの鉛筆を使い分けて人物画を描く、画家・木下晋(1947年~)。
会場に展示された17点の絵画。
大きなキャンバスに描かれた女性の顔から始まり、老女、作家の妻、愛猫と続く。
モデルの目が印象的すぎて、会場全体を見回す余裕もなく、ただただ1作1作と対峙するのみ。
髪の毛、猫の毛、1本1本を描いた線は別として、肌の質感を表す濃淡や、黒い瞳や背景に、鉛筆の筆跡は見られない。とてもやわらかく、しっとりしている。

猫の毛が気持ちよさそうだ。。。うっとり気分で横に眼をやると、どきんとした。
「煩悩」というタイトル(だったっけ?)の小さな作品。
真黒い闇に、ぼぅっと浮かぶ両手。なにかを受けようとしているかのように、杯のように手をかざしている。はて、手のひらの上の闇の黒は、ぱっと見ではわからないが少し濃淡があるのだろうか。じっと見つめていると、なにかモワモワしたものがあるように見えるのだけど。。。背筋が少しぞっとした。

「煩悩」の後に続いて、自画像。そして、そこからは瞽女・小林ハルさんをはじめ、眼から光を失った、あるいは生まれつき盲目だった人を描いた作品が続く。
ほとんどが、高齢の老人である。
鉛筆によって深く刻まれた皺の強さとはうらはらに、ガーゼのようなやわらかい印象。
寂しげにも見える表情は、一方で、人がだれでも持つであろう邪悪というか、俗なものが抜けたような、見ていて安らぎさえも覚える。
さらには、人物画であるものの、そこに、人の生きてきた時間さえも見えてくるように感じるのだ。時空を超えた、時間の感覚。

木下は、絵を描くだけでなく、会話や対話をおこないながらその人物を知っていくという。
人への興味と敬意の結果、絵に魂がこもるのだろうか……絵を観ているのに、生身の老人たちと対峙しているような錯覚になってくる。彼らの歩んできた人生を知るはずもないのに、その歴史を話してもらっているような気になってくる。
こんなにも、心が揺さぶられるなんて。こんなにも、ずっと見ていたいなんて。
こんなにも・・・・・。


ブルーな気分よ、いずこへ?
アートは、時に人に幸せや笑いを与え、また時に人を思考の道へと導く。
そんな時、気持ちのモヤモヤは私の心の中に存在する余裕がなくなる。
木下晋の作品との出会いは、一瞬のうちに私のブルーを吹き飛ばした。
圧倒的な存在感と、感動を私の心に残したのだった。


木下晋展(西本コレクション)
2010/3/30~5/9
会場:福岡市美術館
詳細はコチラ
# by kinoppi-cxb | 2010-05-01 15:16
ポール・スミス氏に学んだこと
4月10日に大濠能楽堂で開催された、ポール・スミス氏のトーク・イベント。
いろいろ感銘するところはあったが、なかでも、彼がはじめて小さなショップをオープンした頃に実践していた行動のリズムは、非常に参考にしたいと感じた。

それは、月~木曜日は生活費を稼ぐためになんでも仕事をするが、金・土曜日は決して妥協をせず自分の表現のためだけに時間を割く、ということ。
週に2日は自分の理想ためにのみ集中するのである。

彼と同じようにできればそれこそ理想だけど、現実はそうはいかない。
でも、少なくとも、月~金曜日はいただいたお仕事をきちんとし、
土曜日は、日常の仕事から離れて、ぐちゃぐちゃになっている頭を整理したり、なんかアイデアに費やす時間をつくれればなぁと。まずは、頭を整理してブログを更新するという単純なことだけでもよい。
そして日曜日は、部屋を片付けたり、本を読んだり、映画を観たり、散歩したり、ワインを飲んだり、時々、料理に挑戦したり。

レイジーなワタイにとって、実現するのは厳しそうだけど、この気持ちをもっていよう。
でないと、最近ぐだぐだで脳みそが腐りつつあるから。
# by kinoppi-cxb | 2010-05-01 14:09 | メモ
< 前のページ 次のページ >