アート旅/旅アート


by kinoppi-cxb
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木下晋に、静かに心、奮い立つ

乾燥な気候が続くためか、黄砂の影響か、口の周り、目の周りの肌がガサガサだ。
こんな日は、ブルー。
できる限り、知り合いと会いたくない。

5月20日に新創刊する雑誌<ソワニエ>のカラーコンセをチェックした後、本当は、「ギャラリーおいし」で開催中の「大庭実華 展」と「アートスペース貘」で開催中の「南たえこ展」に行こうと思っていた。今週末までだから。
でも、この顔。
恥ずかしさと萎えた気分がまじりあい、さらにそこにちょっとした私的な悩みが加わり、ブルーの色は青から深淵へ。。。
そのまま家へ帰ろうと城南線を自転車で走っていたが、なんだか急に気が変わり、ハンドルを右へ、旋回。
「そういえば福岡市美術館で、木下晋展をやっとったなぁ」。
「福岡市美なら、そうそう知り合いにあうこともないやろ」
心でつぶやきながら、ペダルをこぎこぎ。


濃度の異なる20種類もの鉛筆を使い分けて人物画を描く、画家・木下晋(1947年~)。
会場に展示された17点の絵画。
大きなキャンバスに描かれた女性の顔から始まり、老女、作家の妻、愛猫と続く。
モデルの目が印象的すぎて、会場全体を見回す余裕もなく、ただただ1作1作と対峙するのみ。
髪の毛、猫の毛、1本1本を描いた線は別として、肌の質感を表す濃淡や、黒い瞳や背景に、鉛筆の筆跡は見られない。とてもやわらかく、しっとりしている。

猫の毛が気持ちよさそうだ。。。うっとり気分で横に眼をやると、どきんとした。
「煩悩」というタイトル(だったっけ?)の小さな作品。
真黒い闇に、ぼぅっと浮かぶ両手。なにかを受けようとしているかのように、杯のように手をかざしている。はて、手のひらの上の闇の黒は、ぱっと見ではわからないが少し濃淡があるのだろうか。じっと見つめていると、なにかモワモワしたものがあるように見えるのだけど。。。背筋が少しぞっとした。

「煩悩」の後に続いて、自画像。そして、そこからは瞽女・小林ハルさんをはじめ、眼から光を失った、あるいは生まれつき盲目だった人を描いた作品が続く。
ほとんどが、高齢の老人である。
鉛筆によって深く刻まれた皺の強さとはうらはらに、ガーゼのようなやわらかい印象。
寂しげにも見える表情は、一方で、人がだれでも持つであろう邪悪というか、俗なものが抜けたような、見ていて安らぎさえも覚える。
さらには、人物画であるものの、そこに、人の生きてきた時間さえも見えてくるように感じるのだ。時空を超えた、時間の感覚。

木下は、絵を描くだけでなく、会話や対話をおこないながらその人物を知っていくという。
人への興味と敬意の結果、絵に魂がこもるのだろうか……絵を観ているのに、生身の老人たちと対峙しているような錯覚になってくる。彼らの歩んできた人生を知るはずもないのに、その歴史を話してもらっているような気になってくる。
こんなにも、心が揺さぶられるなんて。こんなにも、ずっと見ていたいなんて。
こんなにも・・・・・。


ブルーな気分よ、いずこへ?
アートは、時に人に幸せや笑いを与え、また時に人を思考の道へと導く。
そんな時、気持ちのモヤモヤは私の心の中に存在する余裕がなくなる。
木下晋の作品との出会いは、一瞬のうちに私のブルーを吹き飛ばした。
圧倒的な存在感と、感動を私の心に残したのだった。


木下晋展(西本コレクション)
2010/3/30~5/9
会場:福岡市美術館
詳細はコチラ
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by kinoppi-cxb | 2010-05-01 15:16