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アート旅/旅アート


by kinoppi-cxb
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写真集『NICUのちいさないのち』は、未来の私たちの道しるべ

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このブログの主テーマ、“アート、ときどき旅”とはまったく関係はないけれど、この写真集を読み終えた時、「今この感情を書き留めておきたい」。強くそう思った。突き動かされた、というべきか。



「この写真、本人が初めて見るときはショックを受けるかもしれないね……」。夫のその言葉を聞くまでは、私の頭の中で、やがて必ず来るその時のことなど予想だにしていなかった。意気揚々と、産まれた頃の娘の写真をアルバムに貼っていた私は、はっとしてその手を止めた。

うちの娘は、622gで誕生した。身長は30センチ。当然、自力で息をすることもできず、呼吸器のお世話にならざるおえない。いつ急変するかもしれないこの小さき命の身体には、呼吸器の他、心拍数、血液の酸素飽和度、血圧などを常に計測する管や、点滴などが何本も装着され、いわゆる“管だらけ”の状態だったが、初めてその姿を見た時不思議と私にショックはなかった。むしろ娘の命を守る“いのち綱”として、とても力強い存在に感じた。

娘が無事にNICU(新生児集中治療室)から退院して約1年半たったいまでも、だから、私は、正期産で生まれた赤ちゃんよりも、保育器に入った赤ちゃん、管がたくさんついた小さな小さな赤ちゃんの方に、「ぎゃひっ、かわいい!」と萌えてしまう。どうやら、“管フェチ”になってしまったようだ(笑)。



『NICUのちいさないのち』も、そんな小さな赤ちゃんたちをただ見たいがために買ったのだが……読み終えたときに、この写真集は、娘と私の“将来の道しるべ”となっていた。

この写真集には、NICUの赤ちゃんたちの写真とともに、この小さな命に向き合い、赤ちゃんを守る人々の言葉が添えられている。そのほとんどが、新生児医療の医師や看護師、助産師といった、医療者の方々だ。
私と同く超低出生体重児を子にもつご両親の気持ちなどは、ブログやツイッターなどで読み知りしていたが、実際に、現場にいる医療者の人たちがどのような気持ちで、新生児たちと向き合っているのか、なかなか知ることはなかった。
この写真集に綴られた、現場の人たちの言葉。親とは違う、彼らの「使命感」「想い」……。



話は戻る。私から見ると非常に可愛いのだが、実は生まれたての雛鳥のようでガリガリ、身体は管だらけの娘の誕生時の写真は、いずれこの写真を見る娘にとっては非常にショックなものだろう。でも、時期がきたら私は、包み隠さず写真を見せ、NICUに入院していた3カ月間で付けていた看護師さんとの連絡ノート、日記はすべて見せようと思っている。それでも、娘のショックを癒す何かが足りないとずっと感じていた。だって、すべての記録は、「私目線」でしかないものだから。
娘が、自分が早産児だったことをきちんと知るのは、ずいぶんと先のことだろう。小学校高学年、いや、もしかしたら中学生になってからかもしれない。そんな先のことを思い悩むのは、とても気が早すぎる。でも、私には、いつか来るその日のことを考えずにはいられない。

1日数時間の面会(うちの病院の場合は1日1回1時間だった)でしか、子どもと触れあうことのできない親に代わり、処置とは別に“育児”をおこなってくれる医師・看護師さんは、子どもにとっていわば“第二の父親・母親”だ。『NICUのちいさないのち』に言葉を綴った医療者の方々は実際に娘を治療・看病してくれた方々ではないけれど、彼らの気持ちは娘の“第二の父親・母親”の気持ちと通じるものがあるに違いないと私は思う。だからこの写真集は、娘にとっていずれ支えになると思うのだ。私に代わって、「あなたの命は、多くの人たちに助けられ、守られ、育てられてきたのだ」と娘に伝えてくれるだろう。
そして、この写真集に載っている赤ちゃんたちの姿は、娘にこうも教えてくれるだろう。「小さく生まれたのはあなただけじゃないよ。いっぱい仲間がいるんだよ」、と。



NICUのちいさないのち
新生児集中治療室からのフォトメッセージ

宮崎雅子写真
ネオネイタルケア編集室編
MCメディカ出版
1800円+税
by kinoppi-cxb | 2012-06-18 15:25 | メモ